刑事ベラミー

ユーロスペースクロード・シャブロル監督の遺作『刑事ベラミー』を観ました。あまりに痛ましい、シャブロルが数十本の映画を撮って最後に辿り着いた境地。最後の最後、映画の向こう側へ突き抜けてしまったかのような作品。


ダンスがあり歌があり美しい女があり美食があり親しい友人との団欒がある。青く輝く海も美しい光もある。人生の美しい部分が美しいまま捉えられている。一方には謎があり、その謎は常に全容を捉えることができないものであり、刑事が謎を解きほぐすその間にも、妻には妻の時間が流れており弟には弟の時間が流れており、そこからまったく別の謎が生まれる。過去との関連を持つものである可能性が示されても、必然なのか偶然だったのか、死者の他には誰も知ることができない。そんな当然のことが当然に示されている、身も蓋もないくらい人生にそっくりな映画。傑作だとか何だとかはしゃぐ気には毛頭なれない。上映は、今回の特集ではあと6月30日(木)21:00からと7月1日(金)18:30からの二回だけです。混雑しているようなので前売りを買うことを薦めます。